戒名をつける動物

戒名って何?

戒名とはお坊さんが死人につける名前のことです。動物にも戒名(?)をつけるものがあります。

肉料理の代表といえば、すき焼き、しゃぶしゃぶ。特上の霜降りビーフしゃぶしゃぶにして食べると、舌の上でとろけるようで、何ともいえませんねえ。

ウー、食べたーい!

残念ながら、カナダのスーパーでは日本のような”霜降り肉”は売っていません。

牛のこと

ビーフとは、もちろん牛肉のことですが、牛がまだのそりのそりと歩いているときは、「おー、ビーフが歩いているぞ!」とは言いませんよね。牛がpass away(die「死ぬ」の婉曲的な言い方)して、食用として店頭に並ぶと「beef」と戒名されるのです。

じゃあ、生前の牛さんは何と言うのでしょう?

一般的にcowといいますね。しかし、厳密に言うとcowは雌牛、乳牛のことです。雄牛はoxbullといいます。バスケット好きの人たちはご存知だと思いますが、かつてマイケル・ジョーダンやスコッティー・ピッペンがいたNBAシカゴ・ブルズのトレードマークは赤い顔の bull です。

豚のこと

さて、牛肉と並んでよく食べる肉といえば、豚肉=pork。生前はもちろんpigですね。アメリカでは重さが120ポンド(約55kg)以下の豚を pig といい、それより大きい豚をhogと呼んでいます。他にもboar(ボア)ということもありますが、wild boaとなるとイノシシのことです。豚とイノシシは親類ですからね。

ついでにhogを使った英語を書いておきましょう。

hogとは口語で、「独り占めをする(動詞)」「独り占めすること(名詞)」という意味で使います。

The boy hogged the toy.
(その子はおもちゃを独り占めにした。)
He is a ball hog.
(彼はボールを独り占めにする。)


あとのほうの例は、サッカーの試合なんかで、「誰にもパスをせず、自分でボールを持ってばかりいるやつ」という意味です。 

羊のこと

4つ足の動物で、他にも食用となるのはです。英語で一般的にsheepといいますが、雄羊はram (ラム)、雌羊はewe (イユー)といいます。羊が食用になればmuttonですね。しかし、子羊は生前も死後も lamb (ラム、b は黙字)で変化しません。
(注:ramとlambの最初のラの発音は違うので注意しましょう。)

こんな言い回しがあります。

She is a mutton dressed as lamb.
(彼女は子羊のように着飾った羊だ。)


すなわち、「彼女は若作りの年増女」。。。

失礼しましたー!

鶏のこと

最後によく食べるchickenのことも書いておきましょう。

「今夜は唐揚げを作るのにチキンを買っておこう」と言ってスーパーで鶏肉を買うかもしれませんね。鶏肉のことをchickenと言いますが、chickenは生きている鶏にも使われます。生きている鶏のオスやメスを区別する場合、オスならrosterメスならhenと言います。また、若いオスの鶏はcockerel、若い雌の鶏はpulletと言います。こんなに細かく区別して呼ぶのは料理人だけじゃないかと思うのですが。。。

それにしてもpulletがいつhenに変身するのでしょうね?ある人は最初の卵を産めばhenと呼ぶのだとか、別の人は卵を産んだかは関係なく、1年経てばhenと呼ぶのだとか言います。鶏は人間のように決まった年齢になれば選挙権を与えられたり、成人式があったりしないですから。飼い主が、これはpulletだ、あれはhenだと言ったらそういうことになるのかも知れません。

hen ニワトリ
chickが成長してhenへ

ひよこはchickと言いますが、若い娘のことを言う場合もあります。また、臆病者という意味でも使います。腕を曲げて鳥の羽のように動かすジェスチャーをするのも相手を臆病者と侮辱する表現です。

臆病者ではないことを示すために「チキンレース」に挑む若者がいます。映画などでは車を猛スピードで走らせ、崖のより近くに止まったほうが勝ちとなるような度胸試しのゲームです。でも、臆病者に使われるchickenは実際には闘鶏に用いられたりして、決して臆病じゃないですよね。

ついでですが、chicken poxとは病気の水疱瘡(みずぼうそう)、または水痘(すいとう)という意味です。

水疱瘡はかゆみをともなう感染症の一種。 幼い子供がかかりやすい病気です。

肉の日本式名前

日本で食用にする肉にはいろいろありますが、日本風に粋な呼び方があります。諸説があるのでどれが本当かわかりませんが、そのいくつかを書いておきます。

シカの肉は「もみじ」
花札の絵に鹿ともみじが描かれていますね。このことから鹿の肉をもみじと呼んだようです。

イノシシの肉は「牡丹」
山鯨(やまくじら)と呼ぶこともあります。京都の東本願寺にある唐獅子牡丹図描かれている獅子と牡丹の花に由来しているらしいです。また山鯨と呼ぶのは江戸時代にはクジラの肉が食べられていて、当時は獣肉を食べることがよしとしない風潮があったのでクジラ肉ならいいのではと考えたからです。クジラも哺乳類ですが、海の中にいるので魚の仲間だと認識していたのでしょう。

ウマの肉は「桜」
桜に季節が美味しいとか、肉の色が桜色しているとか、いろんな説があります。

ウサギの肉は「月夜」
お月様の中に住んでいるからでしょうかね。ウサギの数え方1羽、2羽と鳥のように数えるのは、獣肉を食べることが禁じられていた仏教徒がひそかにウサギの肉を食べるためにウサギを鳥としたと言われています。ウサギの耳が鳥の羽ですね。

鶏肉は「柏」
5月の端午の節句に食べる柏餅の葉っぱに似ているらしいです。関西生まれの子供は小さい頃からから鶏肉のことを柏と呼んでいます。

鴨肉は「イチョウ」
イチョウの葉っぱが鴨の足に似ているから。イチョウのことを「鴨脚樹」と書くこともあります。

スッポンは「マル」
甲羅の形が丸いことからついたそうです。

ふぐは「テッポウ」
どちらも「あたると死ぬ」からですね。